*「個別質問シート」によるご質問例と葉玉弁護士による実際のご回答を公開しています。

 

 <ご質問の標題一覧
 1.  DVD付属資料69頁「親子会社間取引の決議・監査」
   【ポイント】1に記載のある「経営指導料」の注意点
 2.  会計監査人の報酬に同意した理由等の判断基礎
 3.  「キャッシュアウトにおける対価の相当性等に関する判断の開示」
    において開示対象となる対価の額
 4.  親会社の従業員A氏を社外取締役候補者(再任)とする理由
 5.  内部統制システムの運用状況の記載と改正の適用時期
 6.  政策保有株式の保有理由の開示

 

  1.  DVD付属資料69頁「親子会社間取引の決議・監査」【ポイント】1に記載のある「経営指導料」の注意点

    【ご質問要旨】
     子会社の事業報告に、親子会社間取引についての記載を、6月決算会社では来年からすることになりますが(施行規則118条5号、128条3項について、DVD付属資料69頁・1~3)、特に、同資料の【ポイント】1「経営指導料」について、上記1~3の記載をするにあたっての注意点として、経営指導料の妥当性の検証方法やエビデンスにはどのようなものがあるか、記載にあたっての注意点には具体的にどのような点があるかをご教授ください。
     また、税務問題ですが、東京地判平26.1.24の親子会社の寄付金に該当しないとした事案は、本件に関係があるでしょうか。

    【ご 回 答】
     経営指導料の相当性については、親会社が子会社に対して実際にどのようなサービスを提供しているかを明確にすることが肝要です。たとえば、税務会計、ITシステム、法務、広告、商標・ブランドの使用、取引先の紹介・あっせん等子会社が親会社から得ているサービスには種々のものが考えられます。経営指導契約の中には、親会社が提供するサービスが具体化されていないものも散見されますが、それでは、対価の相当性に疑義を生じさせることになりかねません。逆にサービス内容が明確になれば、子会社がそのサービス内容を自ら実行したり、第三者に委託するときに必要な費用(人件費・システム構築費等)と比較した上、親会社に委託することが著しく不合理でない限り、経営指導契約の締結が善管注意義務に違反するとはいえないと思われます。
     なお、東京地判平成26年1月24日法人税更正処分取消等請求事件判決は、法人税における寄付金認定の適否に関するものであり、本改正とは関係ありません。もっとも、経営指導料等の額が、合理的理由もなく、変動したように見えれば、子会社取締役が善管注意義務違反を問われるおそれがありますので、子会社から親会社に対する支払いについて外部に対し合理的説明ができるようにしておく必要はあります。

  2. 会計監査人の報酬に同意した理由等の判断基礎

    【ご質問要旨】
     
    事業報告には監査役が会計監査人の報酬に同意した理由を書かなければなりませんが、実際には監査法人からの見積りはその後に戴く流れになるので、そのあたりの実情を伺いたい。

    【ご 回 答】
     
    監査役会の会計監査人の報酬についての同意は、通常、会計監査人からの見積りを前提にその適否を判断して行います。正式な見積書が必要不可欠というわけではありませんが、監査役会が同意を決議する場合に少なくとも、監査計画、監査方法、それに伴う工数の見積、タイムチャージ等の資料を前提に検討する必要があると思われます。

  3. 「キャッシュアウトにおける対価の相当性等に関する判断の開示」において開示対象となる対価の額

    【ご質問要旨】
     DVD付属資料64頁「内部統制等の強化と取締役の責任」において、「キャッシュアウトにおける対価の相当性等に関する判断の開示」とありますが、実際いくら以上が開示の対象となりますか。

    【ご 回 答】
     DVD付属資料64頁の「キャッシュアウト」は、少数株主を強制的に排除し、その対価を現金で交付する行為(たとえば、全部取得条項付種類株式の取得等)のことです。この場合には、当然、対価の額にかかわらず、相当性に関する判断を事前備置書面等により開示しなければなりません。他方、会社が一般の取引等で対価を支払う場合には、金額の多寡にかかわらず、相当性に関する判断の開示はありません。

  4. 親会社の従業員A氏を社外取締役候補者(再任)とする理由

    【ご質問要旨】
     
    当社では、昨年まで、親会社の従業員であるA氏について「A氏を社外取締役候補者とした理由は、●●に関する専門的かつ広範な知識を有していることに加え、一般株主との利益相反のおそれのない方として認識しており、取締役による業務執行の監督機能の維持・向上に資すると考えたためであります。」と記載しておりましたが、会社法改正後の株主総会であり、経過措置を活用して、社外取締役候補者としているため、上記理由は株主から納得されるとは思えません。
     株主から違和感を持たれないような記載方法があれば、ご教示いただきたく存じます。


    【ご 回 答】
     
    A氏が親会社の従業員であることは明白ですので、その点を気にする株主については、どのような説明をするにせよ、納得を得るのは困難であると思います。
     他方、一般株主の大部分は、親会社の従業員が社外取締役候補者であることについて興味がないと思います。
     とすれば、株主総会参考書類の記載事項としては、現在の記載でも十分であると思います。
     あえて追加するならば、A氏の実績を加えることは考えられます。
     たとえば、「一般株主との利益相反のおそれのない方として認識しており」より後の部分を「取締役会においても【配当政策や執行役員の評価等】について積極的に意見を述べる等一般株主の利益保護の観点から執行の監督に尽力されてきた実績を有するからであります。」

  5. 内部統制システムの運用状況の記載と改正の適用時期

    【ご質問要旨】
     
    当社では現在、本年6月株主総会に向け準備しています。事業報告の内部統制システムの運用状況について(施118条2号)は、本年6月総会の事業報告での記載は必ずしも法律上の義務ではないと解釈しておりますが、それで間違いはないでしょうか。
     内部統制に関する決議(会社の体制及び方針)は新法に対応し5月に決議する予定ですが、その運用状況については来年6月総会の事業報告で初めて記載することでかまわないでしょうか。
     5月に決議し、その運用状況をすぐさま本年6月総会の事業報告に記載するのは大変難しく他社も大いに悩んでいるところだと感じております。もちろん今6月総会での想定問答ではこの件についての準備は必要だと考えております。


    【ご 回 答】
     
    会社法施行規則等の一部を改正する省令附則第2条第6項によれば、「施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る株式会社の事業報告及びその附属明細書の記載又は記録については、なお従前の例による。」とされていますので、3月決算会社の場合には、平成27年3月期の事業報告については新規則に基づく運用状況を記載する必要はありません。
     なお、同附則第7項は、「施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る株式会社の事業報告に係る新会社法施行規則第百十八条第二号の規定の適用については、同号中「運用状況」とあるのは、「運用状況(会社法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第九十号)の施行の日以後のものに限る。)」とする。」と規定しており、3月決算会社の来年(平成28年)の総会については、「平成27年5月1日以降の運用状況」が事業報告の記載事項となります。
     なお、5月以降の決算期の会社は、附則7条が適用されますので、今年の事業報告から5月1日以降の運用状況の記載が必要です。

  6. 政策保有株式の保有理由の開示

    【ご質問要旨】
     
    当社は、某財閥系の企業グループに所属しており、これらの会社では従来より株式持合いを行っていますが、このたびのコーポレートガバナンス・コードで保有理由の開示が求められることとなった場合、どのような理由を記載することがよいと考えられるでしょうか。

    【ご 回 答】
     
    政策保有株式の対象会社との関係について実態に則して記述する必要はありますが、一例を記載させていただきます。
    「当社は、●●グループに所属する企業の株主として投資先企業と対話をすることにより、投資先企業の持続的成長を促し、当社を含む●●グループ全体の企業価値及び資本効率を高めるとともに、投資先企業との関係強化による新技術等の共同研究、共同開発の実施、得意先との関係強化等を行い、当社の業績及び企業価値の向上を図ることを目的として、中長期的に当社の事業の展開に資する可能性のある●●グループの株式を保有しております。」